トランプ政権の今後を左右するアメリカ中間選挙は、与党・共和党が下院で過半数を割り込み、「ねじれ」を許す結果となりました。しかし、上院での議席増は親トランプの結束を強め、切り札のドル安政策などを加速させる原動力となりそうです。

今回の中間選挙は上院35議席、下院435議席が争われ、大接戦の末、民主党が下院の過半数議席を獲得しました。米議会では今後、民主党が下院でトランプ政権への対決姿勢を強め、ロシア疑惑などの問題が蒸し返される見通しです。トランプ政策の本丸であるインフラ投資も、財政赤字拡大につながるとの観点から反発が強まるでしょう。議会での審議が滞れば、景気への影響も懸念されます。

筆者は1カ月前から上下両院とも共和党が過半数を維持するとみていました。その最大の理由は、経済情勢のITバブル期以来の好調で、株価も9月まで最高値更新が続いていたためです。さらに、大統領が当選後最初の中間選挙で逆風にさらされる傾向があるにしても、2年前の選挙でトランプ氏は圧勝でなかった分、クリントン、オバマ両元大統領に比べ揺り戻しもそれほど大きくないと考えたためです。

開票作業が進んで民主党の下院勝利の可能性が高まると、トランプ大統領はツイッターで「素晴らしい大勝利、みんなありがとう!」とつぶやきました。当初は単なる負け惜しみだと思いましたが、どうやらそうでもなさそうです。ポイントは上院での勢力拡大です。最初の中間選挙で上院の議席を増やすのは珍しいケースのようです。共和党内の親トランプの結束力が強まったことは、議会運営に表れるでしょう。

法案審議の可決に上院で必要な議席数は、過半数で済む案件もあります。最も大きいのは、最高裁判事などの人事と自由貿易協定の承認です。特に、トランプ政権は昨年12月にまとめた「国家安全保障戦略」で経済的な覇権を強調。ロシアや中国、欧州連合(EU)との貿易戦争も辞さない姿勢を打ち出しており、今年に入って貿易赤字是正に向け貿易相手国への制裁を強めています。

共和党が上院で議席を増やしたことで、貿易問題にはさらに強気の姿勢になりそうです。下院で過半数を獲得した民主党がグローバリズムの立場からトランプ政権の自国利益最優先の通商政策に反対しても、抑止はできないでしょう。議席数を減らしたからといってトランプ政権が民主党の主張を受け入れざるを得ない、とみるのはインテリの理論です。それが通用しないことに気づくべきです。

中間選挙の結果を受け、米中首脳会談の行方が注目されます。足元の中国経済はデータが示すようにやや減速ぎみで、成長を維持しようと金融政策も緩和方向に向かっています。しかし、足元の人民元は1ドル=7元の節目に接近。その水準を割り込むと他の新興国通貨の売りも強まると警戒されています。中国政府はどこまでも強気なトランプ政権の攻撃をかわすため、元切り上げに合意するとの観測も一部にあります。

中国が通貨安政策を改めれば、これから始まる日米物品貿易協定(TAG)交渉でも日本の為替条項受け入れは時間の問題かもしれません。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

 提供:フィスコ

https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201811110020